マイリバー Vol.4(瀬田川洗堰/西下陽子)

 

 琵琶湖に流れ込む川は120本、琵琶湖から流れ出る川はたった1本、この瀬田川だけ。この流れをコントロールして琵琶湖の水位を調節しようとするのが、「瀬田川洗堰」です。

 

 洗堰の主な役割は、

 @大雨で琵琶湖の水の量が多いときには、たくさんの水を流す。

 A雨不足で水の量が少なくなると、むだな水を流さない。

 B上流と下流で洪水が起こらないように、水位調節をする。 

 琵琶湖河川パンフレットより

 

 詳細は、国土交通省近畿地方整備局琵琶湖河川事務所のHPをチェックしてみてください。洗堰の歴史やゲート操作の仕組み、洪水調節の考え方が絵入りでわかりやすく記されています。

さらにこのHPでは毎日の朝6時現在の琵琶湖平均水位及び洗堰放流量も見ることができます。

 

 このようにとても大切な役割を担っている洗堰ですが、堰という人為的な操作による生物環境などへの影響の是非やその操作内容についてはいろいろなところでさまざまな議論もあるようです。

 そういった難しい議論はとりあえず別のどこかに置いておくとして、ここでは皆さんが普段あまり目にされることはないであろう堰操作のごくごく日常の風景をご紹介してみようと思います。

 

 上下流との調整の結果、その日の洗堰の放流変更(増量)が決まると、担当職員たちは作業服に、ヘルメットを被り、足元は長靴を履いて、首から無線機をぶら下げて、操作開始30分前に巡視に出発します。堰下流の川の中にいる人たち(釣り、カヌー、散歩など)に放流量を増やすことを知らせ、危険のないように気をつけていただくためです。両岸の徒歩巡視と少し離れたところまでの警報車巡視に分かれます。無線を使って操作室(琵琶湖河川事務所の3階)と逐一連絡をとりながら、操作をしても安全な状態かどうかを確認していきます。そして、操作開始から終了まで異常がないようにそのまま待機します。全開の場合には操作自体に数時間(急激に水位が上がることのないよう、一定の操作ペースが決まっているため)を要します。全閉の場合には、逆に堰上流の水位が上昇するため、上流への巡視が必要となります。このように、いろいろな状況に応じて、いずれも操作に伴う事故などが決して起こることのないように、細心の注意が払われています。

 

 当然のことなのですが、夏は暑くてアタマからカラダまで汗だくになります。冬はブカブカの防寒服を着込んでみても風が吹きつけてやっぱりとても寒いです。背丈ほどある草をかきわけ、ゴツゴツした岩を踏み越えて。虫がとてもニガテなわたしには少し緊張(?)してしまう瞬間でもありました。

わたしにとっては川そのものにとても近づくことのできるとても良い機会でした。水をじっと見ているとたくさんの小さな魚が群れをなしていたり、とても大きな魚が悠然と泳いでいたり。河川敷の緑に季節を感じたり。街では見られないような鳥がすぐ近くを通り過ぎたり。地元の釣りの常連さんたちに魚のことを教わったり、放流変更による川の状態もわたしなんかよりもずっと詳しいです。

 

 瀬田川沿いには、紫式部ゆかりの石山寺、厄除けで有名な立木観音などもあります。JR石山駅からバスで20分程度。

秋の行楽のついでに、少しだけ足を延ばして「瀬田川洗堰」も是非ご覧になってみてください。ここが、日本最大の湖 “琵琶湖”の出口です。

琵琶湖の水は、この瀬田川をこうやって出発して、上流の滋賀県を含め、下流の京都府・大阪府・兵庫県の合計約1400万人の生命を支えています。

 

 「瀬田川」は、京都府内に入り、天ヶ瀬ダムを通過すると、「宇治川」と名を変え、さらに下流にて三川合流(木津川及び桂川

との合流)を経て、「淀川」として大阪湾へと流れ込んでいきます。

 

「瀬田川」や「宇治川」は通称で、河川法における正式な名称は「(淀川水系)淀川」となっています。

 

(澤井河川塾通信Vol.036掲載H15.10.07)

 

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